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幻想文学の名手フリオ・コルタサルのおすすめ短編小説ランキング 10選。

空気のように軽いコルタサルの文章は、強烈な力で吹きつけて我々の心にイメージと幻想をかき立てる。・・・・・・・オクタビオ・パス

 

コルタサルが遺してくれたのは、彼の思い出と同様に色褪せることのない美しさを備えた芸術作品だ。・・・・・・・・ガブリエル・ガルシア・マルケス

目次

 

  1. フリオ・コルタサルとは。
  2. コルタサルおすすめ短編小説ランキング10選。
  3. 長編小説のほうがお好きな方へのおすすめのコルタサル作品2選。

 4.まとめ。

  

 

1 フリオ・コルタサルとは

 

アルゼンチンの小説家フリオ・コルタサル(1914年~1984年)は、『石蹴り遊び』などの優れた長編小説を残しました。それに加え、短編小説にも優れた作品が多く、今もなお熱心なファンが多い作家の一人です。

 

ベルギーに生まれ、アルゼンチン、パリと拠点を変えながら作家としての活動を続けてきたコルタサルの作品には、ラテンアメリカ文学のもつマジックリアリズムも、フランス文学のもつ幻想性も備わっています。

 

そこに彼のキャリア(教員、詩人、ジャーナリスト、政治的活動家)も加わって、明晰でありながらも不可思議な、異質でありながらもクールな独特の読み味をもつ秀作をいくつも排出しています。

 

2 コルタサルお勧め短編小説ランキング10選。

 

1位

『南部高速道路』

★10(個人的好み度数です。★10が満点です)

 

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いつの間にかシフトされている非日常の世界。そこで繰り広げられる生活という名の戦い。

 

今まで私が読んできたすべての短編小説のなかでも、トップスリーには入るであろう傑作です。一種のサバイバル小説と言えなくもない。あり得ないほど長引く渋滞が、普段は通りすぎるだけの場所である高速道路上で、さまざまな人間ドラマを生みだしていく。 登場人物は全員プジョーとかベンツとか車名で表現され、乾いた筆致で出来事のみ記載され、心理描写はほとんどない。渋滞でうんざりするような始まりの描写から、渋滞がながびくごとに物語はだんだんと神話のような重厚さを増していく。

まぎれもない傑作で、池澤夏樹編の『世界文学全集短編コレクションⅠ』でも本作品がトップバッターとして収録されています。

『南部高速道路』の書評はこちら↓

log.jp

2位 『すべての火は火』

 

★9

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ふたつの世界を交互に描写する実験的な小説。そして(火)にとって、世界は二次的なものでしかない。

 

円形闘技場で今まさに戦おうとしている拳闘士と、どうやら別れ話をしている男女の通話の場面が不定期にいりみだれる実験的な作品。ふたつの世界は一見なんのつながりもないように見えます。しかしそこには周到にちりばめられたいくつものモチーフが象徴的に配置され、二つの世界に不思議な共鳴をもたらしています。スリリングかつ、緻密でダイナミックな展開が,無駄のないストイックな文章で表現されており、なんども読み込んでしまう不思議な魅力があります

 

3位

『正午の島』

〜機内の窓から見えるある島が妙に気になる。そしてその島に移り住む男のお話。

 

★8

 

あらすじ

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航空機の客室乗務員であるマリーニ。彼は週に数日のフライトの際に、正午になると機体の後部窓から見えるキーロス島にいいようのない魅力を感じていた。その時間になると働かず窓にへばりつくマリーニをみて、周囲の同僚はかれを島狂いと揶揄する。ある日かれは職も恋人も世間からも離れてその島で暮らそうと決意し、その島に降り立つ・・・。

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どうしてもあの場所にいってみたい、そう思える場所が私たちの人生でいったい幾つ現れるのでしょうか。ましてやそこで暮らそうと思えるほどの場所といったら長い人生でもそう多くはないでしょう。この物語は私たちが潜在的に持ち合わせている願望のようなものをうまく表現していると思います。

 

4位

『夜あおむけにされて』

★7

 

2位の『すべての火は火』と同じく、主人公がふたつの異なる世界を行き来するタイプのお話です。バイク事故で死にかけた男が、眠るたびに古代の王国(インカ、あるいはアステカ)で花の戦いと呼ばれるものに巻き込まれていく展開となっています。ただの悪夢と思いきや徐々に現実とリンクしていく様が鬼気迫っています。

 

5位 奪われた家

コルタサルの見た悪夢からヒントを得て書かれた作品。満たされた日常が突如壊されていく過程がスリリングに不条理に描かれている。

★7

あらすじ

40代に差し掛かる兄とその妹が、ゆうに8人は住めるであろう大きな家にたった二人で住んでいる。

農園からの定期収入があり、二人とも愛着のあるこの家の管理以外は特にすることもない。兄も妹も婚期を逃しかけているがさほど気にもせず、妹は編み物、兄は読書を日がな行うだけで満足している。

 

平穏な日常を送っていた二人だが、ある日突然兄がこう言う。

「廊下のドアを封鎖してきた。裏手を奪われてしまった」

 

本編を収録している光文社古典新訳文庫は文字が大きく、行間も広くとってあり、大変読みやすいです。敬遠しがちな大作もこの文庫でならスッと理解でき、読み切ることができたりします。

また、今の時代にあった翻訳がされているため以前わからなかった良さに気付けたりもします。私自身、以前の訳で読んだときはそれほど心に残らなかったのですが、今回新訳で読んでみて、その素晴らしさに気づくことができました。本作は、ボルヘスに認められ彼の助けで雑誌に掲載された経緯があります。

 

5位

『誰も悪くない』

★7(上記『奪われた家』と同率ということにさせてください。決めれません(汗)

 

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男がセーターをうまく着れなくて頭がだせないだけの話です。でもこれがすこぶる面白い。幻想文学の名手コルタサルにかかればすべての些細なこともなんだかちょっと不思議で、なおかつセンスよくクスッと笑えるものとなります。

 

6位

『自分に話す物語』

★6

恋人が隣で眠りにつくと、僕は自分自身に物語を話だす。たいてい主人公は僕自身で・・

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政治活動に傾倒してからのコルタサルには執筆活動に割く時間がなく、作品の質がおちたとの声が聞かれますが、下記『愛しのグレンダ』収録の本作と『グラフィティ』という短編はとても面白いです。他人の習慣というものは個人的にとても興味があります。それが個性的で、しかもロマンティックであったならそれはもう大好物ですね。みなさんはどうでしょうか。

リンク

 

 

7位

 

『大きくなる手』

★6

最後の一行にドキリとする切れ味するどい秀作。

 

軽快なタッチの文章でスルスルと読めてしまう。なおかつたった10ページの文量で非常に短い作品。カフカ的な不条理さをあっさりサクサクと書きすすめ、最後に読者にあっと言わせる技巧はさすがコルタサル!と思わず言いたくなる技ありの短編作品です。

 

8位

『シルビア』

★6

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フリオ・コルタサルは実に様々なジャンルの作品を手掛けています。どれも非常に高い水準のものを残していますが、やはりその中でもっとも優れているのは幻想的な物語であると言えるでしょう。

本作はある夏の数日を渓谷にすごしにきた主人公と、複数の家族(おもに子供たち)に起こった不思議な出来事をテーマにしています。短いながらも、いくつもの感情が揺り起こされる秀作です。

 

9位『魔女』

★6

 

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田舎町に住む一人の美しい女。身よりもなく、自ら周囲と距離をおく孤独な彼女は、ある時期から豪邸に住み始め、趣味の良い家具に囲まれて美しい若者と暮らし始める。住民はみな、彼女に対して良からぬ噂を口走る。

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本編を収録している、水声社『対岸』は本当に素晴らしい。1995年にスペインで普及版が出るまでは幻の短編集と呼ばれていました。コルタサルの処女短編集で、後期になると難解になりがちだった彼の作品が、そのエッセンスを凝縮した形でうまくまとまっています。コルタサルの魅力を知りたいと思って、これから読んでみようという方には真っ先にオススメしたい一冊です。

 

10位

『ずれた時間』

★6

 

コルタサル後期の傑作として名高い短編作品です。ある男が12か13歳のころに親友のお姉さんに抱いていた恋ごころについて語っている物語。本編が収録されている『海に投げこまれた瓶』では後期コルタサルに見られる難解さが先行し、面白味にかけるものも多いですが、本作はしっかりと作り込まれた人間ドラマで甘く、ほろ苦い感情が味わえる名作です。

 

3 長編がお好きな方へのコルタサルの長編作品2選。

 

1 『石蹴り遊び』

 

ユリシーズ』の実験的技法を用いながら、パリ、そしてブエノスアイレスを舞台に現代人の苦悩を描いた、ラテンアメリカ文学屈指の野心作。

 

二段組577ページもある大長編です。しかも読み方が3種類あります。さらに言えば、内容は難解で完全に意味を把握しようとしたら必ず挫折します。例えて言えば、これから取り組む資格の勉強のテキストと同じようなもので、最初は意味がわからなくても、読み進めるうちに理解が進んでいくタイプの小説です。読破には苦行に立ち向かう根気がいります。その反面、一旦読み慣れてしまうと中毒のように読み続けてしまい、私も3通りすべてを一年近くかけて読みました。読んだ事自体がその人自身の財産となるような作品です。

 

konkichi.hatenablog.jp

 

 

2 『かくも甘く激しきニカラグア

 

コルタサル人道主義的見地から政治活動にのめり込んだ、後期ルポルタージュの傑作です。冷静な筆致でありながらも、文学の素地も垣間見ることのできる読みごたえのある作品です。

 

 

konkichi.hatenablog.jp

 

4・まとめ

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。フリオ・コルタサル短編小説ランキングいかがだったでしょうか。

 

上記の10位までの短編でしたら、どれを読んでも非常に面白いです。特に一位の『南部高速道路』!これは飛び抜けて面白い。超絶面白いです。まず確実にコルタサルの沼に心地よく浸かることができます。ここまでお読みくださってありがとうございました。この記事をきっかけに一人でも多くの方にコルタサルを知っていただけたら幸せです。ありがとうございました。

 

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