- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

感想『黒い時計の旅』スティーブ・エリクソン著〜超弩級の読書体験がここにある!歴史if&パラレルワールドものの大傑作!!

歴史の源流に突如見たこともないほどのどす黒い血が流れだす。

 

人がそれほどの悪を、狂気を、死を

 

もたらすことができるなど、いったい今まで

 

ほんの少しでも

 

ほんの少しでも

 

考えてみたことがあった者などいたのだろうか?

 

 

 

赤毛の大男

 

バニング・ジェーンライト。

 

血塗られた出自を持ったその男。

 

 

 

彼がそのどす黒い血に触れたとき、世界は別の産声をあげた。

 

彼がその産声を聞いたとき、20世紀は二つに割れた。

 

彼のもとに二つの世紀から女が訪れ始める・・・。

 

 

一人目はアマンダだった。

 

二人目はモリー

 

ローレン、ジーニン、

 

キャサリンにジャネットにリー。

 

 

だがドイツの兵隊が浮浪者を痛めつけている通りで

蝋燭店の上の窓から彼と目と目を合わせた瞬間に

二十世紀を分断させてしまったのはデーニアだった。

 

 

特別美人でもないその娘が踊るとどこかで人が死ぬ。

 

 

何故かはわからない。

 

 

 

何故かはわからないがバニングの書く文章に上顧客がつく。

 

バニングは彼のためだけにアマンダとモリーとローレンとジーニンと

 

いつの間にかいて、いつの間にか消えている彼女らと毎夜毎夜、

 

熱狂的な情事を繰り返す。そしてそれを大笑いしながら筆にする。

 

 

彼は彼の中の暴力を、大きすぎる暴力を感じる。

 

 

彼は生まれた家でその暴力によって腹違いの兄弟を、

 

父を、母を殺している。

 

 

彼もまた血塗られているのだ。

 

 

血塗られた指で血塗られた文章を書き、

 

 

それがまた、血塗られた眼によって熱狂的に読まれている。

 

 

そしてまた、歴史は分断される、

 

 

分断された歴史は、憎しみと悲しみと愛によって

 

 

復讐を誓われる。

 

 

その復讐を私たちが読むのだ。