妄想 in the world 『ゴッドハルト鉄道』多和田葉子
女の視覚に初めて動くものが捕えられたのは、樹木を照らし出す光が急に鋭く削られ始めたのと同じ日だった。その日、女は<樹木>という言葉を使うのをやめてしまった。~中略~翌日から女は樹木を<電信塔>と呼ぶことにした。~中略~梨の電信塔と林檎の電信塔が、守護神像のように左右に立つ庭園と呼ばれる正方形の土地、女はその日、それを<庭園>と呼ぶのをやめてしまった。女はそれを心の中で<四角い土地>と呼び始めた。聖書によれば、名づけは本来創造主の仕事ではあるが、人間にゆるされたもっとも力強い創造行為の一つであるとも思うのだ。生まれながらにして生きなおす。そんなことを可能にする行為があるとすれば、「名を変える」というのはもっとも現実的でありながら、もっとも奇跡的な行為のひとつかもしれない。 本書には4編の短編が収められており、いずれも異質な世界観で頭がくらくらする。現実世界を舞台としながらも、妄想的、もっといえば多少病的な世界が激しく入り乱れ、読後はどこか名も知らぬ、言葉も通じぬ、ましてや価値観の共有、またそれに伴う共感による感動すらも拒絶された世界へほっぽりだされたような気分になる。『無精卵』がもっとも鮮烈で病的だが、『ゴットハルト鉄道』に感じる既視感も不思議不思議でとても良い。 若い頃からドイツに住み、日本語とドイツ語の両方で詩と小説を書く著者・多和田葉子。こちらに理解できるだけの知力はないが、そんなものなくても好きな作家だ。 おそらく彼女の小説は私らの原記憶にささやきかけるたぐいのものだ。昔見た、夢の中のあの景色。道も建物も、木でさえも灰色の町をさまよい歩いて、泣きそうになりながら自宅にたどり着いたら、そこには全く知らない人たちが私の親、そして私自身として住んでいた。昔見た、そんな夢を想い出す。そんな本でした。
感想『無職ときどきハイボール』酒村ゆっけ著〜ネオニート、酒テロリストなる彼女は一体何者なのか。可愛らしい外見とは裏腹に、底知れぬ破天荒と軽やかな文才が垣間見える。登録者数40万人の人気ユーチューバである著者初となる、最低かつ最高な酒と食の沼エッセイ。
ずるぽんずるぽん。おいじーーーーー!!!
なぞの手書き文字がおどっている。
なんだか疲れ果て、もうなにもできないけど
せめてじぶんにご褒美を、とおもって立ちよった書店。
平台につまれていたこの本を手にとり、ページをめくって目にしたものがこれだった。
なんだか気がぬけてるけど、そこはかとなく可愛らしいイラスト。そして帯にはやばいTシャツ屋さんの推薦文。
気になる。
新卒で入った就職先をすぐに辞め、そのまま
酒を彼氏とするネオニート生活を満喫するみたいな内容がかいてある。
なんとなく共感できるなあ、と思い購入したところこれが大当たりでした。おもしろい。
ふつう一昔まえだと、大学卒後のわかものが一般企業に就職してすぐに離職。それからまもなく全国流通の本を出版するなんてありえなかったんじゃないでしょうか。
著者の酒村さんは人気ユーチューバーとのことで、時代がかわったのだなあとなんだか一人おじいさんのような気分になりました。
料理研究家のリュウジさんなんかもそうですが、酔っぱらっているすがたが本当にたのしそうな人っているんですよね。
やっぱり楽しそうな人って最高だな。
こっちまで明るい気分になってきます。
ゆっけさんはすんごいお酒飲んで奇声を(心の中で)発しますけど
たべものに関する描写が実はすんごいんです。
胃のなかの食料が文字にすいとられてるんじゃないかしらん。ってくらいお腹がすきます。
おれ(わたし)はお酒のまないしなーなんて方も読まないともったいないですよ。
きっと自分の生活が影響されてすこしなりとも変わるとおもうんです。
もちろん、たのしい方向にですよ。
本を読むときにはいろいろな理由があってよもうとするんですけど、
この本はなんか楽しいことないかなあ〜って思う方に読んでほしい本だと思いました。
追記;肝臓だけは大切にしてください。
おしまい。