- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

感想『死の蔵書』ジョン・ダニング著〜本好きにはたまらない‼️古書収集家の刑事が主人公のハードボイルド&ミステリー!!私の脳内映画館では殿堂入りの大ヒット作!!

ミステリーを読むときは自分流の決めごとがある。

 

脳内で、映画館を開くか否かだ。

 

本読みの人は、誰しも一度はやっているとおもうのだが、要するに登場人物に配役をふりわけて、脳内のスクリーンで映像化するかどうかである。上映するかどうかの決め手は主人公に好感がもてるかどうかが大きい。

 

f:id:Konkichi:20220314235753j:plain

 

本書主人公クリフォード・ジェーンウェイはデンヴァ―警察殺人課の巡査部長。36歳。腕ききの刑事である彼は、こよなく本を愛する蔵書家でもある。本に関する知識は古書店の店主たちも舌を巻くほどで、プロである彼らからDr J(ドクター・ジェイ)とあだ名されるほどだ。

 

『ニック・オブ・ザ・タイム』『ナインス・ゲート』のころのジョニー・デップを配役してみたらなんの違和感もなく好感が持て、ストーリーの素晴らしさも相まってあっという間に読み終わってしまった。

 

Dr J は洗練された知識人でありながら、実は非常に兇暴な一面がある。彼には以前からお互いに憎み合っている宿敵がいて、その人物を死ぬほど憎んでいる。金の力で、つかまることを免れているそのサイコパスをなんとか逮捕したいと日々思い、叶わなければ殺害したいとさえ願う。

 

物語の序盤、ハルク・ホーガンのような筋肉質の体躯を持つ筋金入りのサイコパス・ジャッキー・ニュートンとの因縁めいた緊迫感あふれる丁々発止が見られ、脳内映画は手に汗握るサスペンスが繰り広げられ、同時に本の掘り出し屋の殺害事件の犯人捜しも展開する。その過程で、古書に関する店主たちの情熱や、小説に対する熱い想いがこれでもかと放射され、本好きにとっては、ある意味体に悪いくらい面白い。

 

頭の中のスクリーンを見つめるうちに、ある一つのことに気付き始めた。私のような頭の悪い読者は、じつはミステリーを読んでいても、トリックや、犯人などは半分どうでも良いのだ。Dr J の星回りはそんな実も蓋もない真実を読者に教えてくれる。彼自身の人生が、謎なんてどうでも良いほどに面白いのだ。

 

ちなみに彼は意外にひょうきんものでもある。そして惚れっぽい。彼以上に本に詳しく、ミステリアスなリタ・マッキンリ-に恋をした彼は今までのインテリジェンスとハードボイルドが崩落するくらいの勢いで口説きにかかる。

 

「一目惚れを信じるか?」

「馬鹿な質問ね」

「じゃあ馬鹿な返事をしてくれ。」

 

「見えないのか、夜空に輝くあの星が。あれはジェーンウェイとマッキンリーの星だ。ロマンチックじゃないか。」

 

本書はどうやらシリーズ化しているらしい。脳内で会議にかける必要はもうない。続編もきっと読むし、私専用の映画館で贅沢にわたしだけのための上映をきっとしよう。Dr J の人生をこの先も見てみたいからだ。