- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

感想『ツァラトゥストラはこう言った』フリードリヒ・ ニーチェ著〜深夜高速とニイチェ。神は死に人間は生きるの巻。

f:id:Konkichi:20220105005446j:plain



どの国、どの時代にも起爆的役割をになう思想がある。美術や伝統、革命や戦争、果ては迫害など表出手段は様々だが、本書『ツァラトゥストラはこう言った』は幸福にも散文詩のような物語形式において発表された。 そのまま通読しても、正直よく判らない。攻略本がないとクリアー出来ないRPGと同じである。ニーチェに関する本は無数に出版されているので、併行して読み進めると理解が深まり、いたく感動する。

 

あらすじとしては、30歳にして10年間山にこもったツァラトゥストラ(聖者、預言者にニュアンス近い)が、山を降り民衆に教えを広める物語。 まず彼は、当時の世界観では地球的規模の問題提起をする。「神は死んだ」である。ルサンチマン(怨恨感情)で人は歪んでしまい、強弱(価値)の転倒が起こる。真理の否定。強い意志の必要性から「超人」思想が生まれ「精神の三つの変化」が語られる。

 

他人の感じ方は私の理解の外にあるが、信仰心のあつい家系に生まれた私にとっては、「神は死んだ」やルサンチマンニヒリズムは非常に興味深く、また心底納得できるものだった。そこから脱却する手引きとしての超人思想、精神の三つの変化も読了時、私の心に衝撃を与えた。

 

とどめの一撃に「永劫回帰」思想がある。これは非常に残酷、かつロマンチシズムに溢れている。ここに、これまでの否定が一挙に裏返る大いなる肯定があるのだが、それはぜひ読んでいただきたいな、と思うのだ。一見あまりに文学的で、ありえないことを大真面目に言っているようにも聞こえるのだが、そこがニーチェニーチェたるゆえんである。

 

ある晴れた日、ニーチェは片想いの女性ルーサロメとピクニックに出掛けた。その恋は実ることはなかったのだが、彼はその日を人生で最良の日とした。この日のために私は生きてきたのだと。その喜びが永劫回帰思想によく出ている。25歳で大学教授になりながらも、最初の論文で学会から追放され、晩年発狂するニーチェにとって、ささやかでも最も喜びに溢れた一日だった。

 

生きていて良かった。生きていて良かった。そんな夜を探してる。生きていて良かった。生きていて良かった。そんな夜はどこだ。

 

上記はフラワーカンパニーズの名曲『深夜高速』からの引用です。引用部のサビを聞くと、どうしても本書の永劫回帰思想をおもい出してしまいます。この一曲だけのトリビュートアルバムも出てるほどの名曲です。読書と音楽は相思相愛、ビールとから揚げのようなものなのです。


www.youtube.com

 


ツァラトゥストラ(上) (光文社古典新訳文庫)

本書上巻は、現在Amazonプライム無料体験でも読めます。対象期間は不定期です。↓

https://www.amazon.co.jp/tryprimefree

 

 

konkichi.hatenablog.jp