- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

感想『あなたの人生の物語』テッド・チャン著〜なんて素晴らしいタイトル。作品名だけで多分面白いだろうという予感に満ちていた。期待以上の面白さに反し、読後ふしぎに思ったのは心に残る深い哀しみ。そしてそれが美しい事。


あなたの人生の物語

 

あなたの人生の物語

 

突飛な状況に現実感を持たすため物理学?系の説明があまりに過多で、理解できない箇所も多かったのだが、その反面主人公が自分の娘に対して語りかける並行部分の文章の方は、埋め合わせのように情感に満ち満ちているようで感動を呼び起こす。まさに、『あなたの人生の物語』なのだ。

 

『地獄とは神の不在なり』

 

仮にもし、私が極度の金持ちで、単純に自分の好きな作品だけで何かアンソロジー的なものを編むとしたならば、多分本書からはこの一作だけを大金を投じてねじ込みます。それくらいに気に入りました。SFという括りに著者はいるようだけれど、この作品は彼のSF作家としての特異性を顕著に表わしているように思う。宗教色の強い物語で、ドキュメントのようでもあり、ロードム-ビ-のようでもある。災害の物語でもあって、再生の物語でもある。アイディアも奇抜で、こちらの虚をつくような設定にもかかわらず、主観が数人にわたり切り替わったり、俯瞰した視点からの文章も織り交ぜられ真実味にあふれている。何より主人公が可哀想だ。愛する人が、天使ナタニエルの降臨による爆風の影響で、割れたガラスに傷つけられ、苦しみながらこの世を去ったのだから・・・。

 

『美醜について-ドキュメンタリー』

 

おそらく本作が読者から最大の関心をえるだろう。だってあなたが男性である以上、女性である以上、いや、人間である以上、いや、生き物である以上、絶対に避ける事の出来ない最大に重要な問題であるから。よくSFには行き過ぎだ管理社会のような設定があるものだが、こちらはその一歩手前の、少しく先進的すぎる団体が思いつきそうな、科学力さえあれば実行しそうな、一つの未来社会のひな型のような物語で、それを紡ぐ文章にしても、複数の雑多な立ち位置の人間の発言を表現方法として、非常に巧妙に書かれている。自分がもし、学生でこのような社会に生きていたとしたら、私は果たしてカリーアグノシア(美醜失認処置)を受けているのだろうか・・・?

 

(読んでいただきありがとうございました。) テッド・チャン二作目はこちら↓ 

 

konkichi.hatenablog.jp

 

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