- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

私のスゴ本

感想『悪魔の涎・追い求める男他八編』フリオ・コルタサル著〜短編小説でこれほどの傑作を私は他に知らない。日常から神話へ。孤高の傑作『南部高速道路』収録。

そして彼らはある時期になると、敵の男たちを狩りに出るが、それを花の戦いと呼んでいた。~『夜、あおむけにされて』より抜粋。 現実と異界が何の前触れもなしに入り乱れ交錯する。 第三者の目から俯瞰する現地報告のような無駄のない乾いた筆致が、妙なリ…

感想『夜の果てへの旅 下』セリーヌ著〜エリ、エリ、レマ、サバクタニ!素晴らしきこの世界を怪物セリーヌと共にこき下ろす。

『夜の果てへの旅』は「明確な目的のある本」であって、その目的とは現代の人生の-いや、むしろ人生そのものの恐ろしさ、意味のなさに対して抗議することである。 上記はジョージ・オーウェルの評論『鯨の腹の中で』からの引用で、ある意味ではその通りであ…

感想『夜の果てへの旅 上』セリーヌ著〜最低が最高になる不思議。愛すべき愚痴の天才セリーヌの傑作長編小説。

悲劇的ピエロ気質でうっかり戦争に参加したことから、果てのない地獄を遍歴することになるバルダミュ。 彼の「語り」で物語は綴られる。戦争、放浪、病気、失恋。バルダミュの遍歴はまるで血の巡りの悪いオデュッセウスよろしく辛酸を嘗め尽くす。ところが不…

感想『ツァラトゥストラはこう言った』フリードリヒ・ ニーチェ著〜深夜高速とニイチェ。神は死に人間は生きるの巻。

どの国、どの時代にも起爆的役割をになう思想がある。美術や伝統、革命や戦争、果ては迫害など表出手段は様々だが、本書『ツァラトゥストラはこう言った』は幸福にも散文詩のような物語形式において発表された。 そのまま通読しても、正直よく判らない。攻略…

感想『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ著〜+カオス畸形児無秩序老婆+

冒頭。ブリヒダという老婆が死んだことについて、何の断りもなく大勢の人間が現れて、入れ替わり立ち代わり喋っている。 しばらくして、ベニータという名のシスターが、一人の男に自転車を運ぶよう指示をだす。ムディートと呼ばれているその男は聾唖者であり…

感想『精霊たちの家』イザベル・アジェンデ著〜まず三つ。闇の中の光の痰壺。

まず三つ。 ①本書は金銭を目的として書かれたものではない。 ❷わたしたち、読者の身の安全は確保されている。 ③傑作である。 上記の①〜③について、順をおって記載していく。 ①に関しては著者の経歴をみて、本書を読めば明らかである。本書『精霊たちの家』は…

感想『北回帰線』ヘンリー・ミラー著〜<百色の語彙>原始の太陽は安宿に泊まる。〜アナイス・ニンによる序文は序文史に残る名文と言える。そしてその序文が示す通りの爆発的名作。

もしかしてこれは・・(ページをめくる手を止める) まさかね。う~ん・・(思い出したり考えを巡らす) いや、すごいけど・・・(3ページほどさかのぼる) いやいやいやいや・・・(深呼吸) やっぱりそうか。・・・(気づき) ああ、すげえ。・・・(おし…

感想『人間この劇的なるもの』福田恒存著〜人間はただ、生きることを欲しているのではない。現実の生活とはべつの次元に、意識の生活があるのだ。それに関わらずには、いかなる人生論も幸福論もなりたたぬ(本書より抜粋)。エッセイのように読みやすく、哲学書のように深い、私の人生の指南書。

A:福田恆存にあった?小林秀雄の跡取りは福田恆存という奴だ。これは偉いよ。 B:福田恆存という人はいっぺん何かの用で家へ来たことがある。あんたという人は実に邪魔になる人だと言っていた。 A:あいつは立派だな、小林秀雄から脱出するのを、もっぱら心…

感想『罪と罰(1・2・3)』ドストエフスキー著〜人という音楽が爆音で流れている。

ドストエフスキーは『カラマーゾフの兄弟』が最も有名だが、個人的には本書『罪と罰』の方が圧倒的に面白い。それはもう、小説史上NO5には入るであろうと、独断で太鼓判を押したくなる面白さだ。 そもそも長い小説だが、ドスト特有の冗長さが本書にはない。…