2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧
石川啄木の歌は他の誰とも似ていない。 誰でも共感できる体験を歌っているのに、誰にも真似することができないというのは実はとてつもなく凄いことだ。だけども啄木は別に偉い男ではない。むしろ駄目な男だ。だがそれを歌の世界では隠そうとしていない。そこ…
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫) エルネスト・チェ・ゲバラが革命家となる前。23歳の時の貧乏旅行記だ。医学生だった彼と、親友であるアルベルトは 冒険と、日常からの逃避のため、オートバイによる北米旅行を思いつく。そのときに書かれた日記…
スローターハウス5 「われわれにしたって同じことさ、ピルグリムくん。この瞬間という琥珀に閉じ込められている。<なぜ>というものはないのだ。」 <時の試練>を乗り越えた本だ。 不朽の名作でもあるし、主人公の人生においてもそうだ。普通の人の千倍も…
ミステリーを読むときは自分流の決めごとがある。 脳内で、映画館を開くか否かだ。 本読みの人は、誰しも一度はやっているとおもうのだが、要するに登場人物に配役をふりわけて、脳内のスクリーンで映像化するかどうかである。上映するかどうかの決め手は主…
幻想的で、硬質で、軽妙洒脱で、残酷。 その作風は多岐にわたり、そのどれもが超高圧にして練磨されつくしている。自然描写は美しく、情感に溢れ、語りやセリフは弾むようなリズムがある。著者の持つ特異な経歴が遺憾なくその作品に反映され、他のどの作家と…