- Book Box - 本は宝箱。

SF・幻想文学多めの読書感想サイトです。基本好きな本しか感想書かないので、書いてある本はすべてオススメです。うまくいかない時ほど読書量がふえるという闇の傾向があります。それでも基本読書はたのしい。つれづれと書いていきます。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

感想『啄木歌集』久保田正文編〜〈歴史に残る無邪気・邪気〉一度でも 我に頭を 下げさせし 人みな死ねと いのりてしこと。

石川啄木の歌は他の誰とも似ていない。 誰でも共感できる体験を歌っているのに、誰にも真似することができないというのは実はとてつもなく凄いことだ。だけども啄木は別に偉い男ではない。むしろ駄目な男だ。だがそれを歌の世界では隠そうとしていない。そこ…

感想『モーターサイクルダイアリーズ』チェ・ゲバラ著〜人類史にのこるほどの革命家である彼が、もとは何処にでもいるような、夢見がちな、冒険好きな、向こう水な、一青年であったことに驚きを感じさせる一冊。本当にそこら辺にいそうな、少しばかり正義感の強いくらいの若者のユーモラスな青春旅日記。

モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫) エルネスト・チェ・ゲバラが革命家となる前。23歳の時の貧乏旅行記だ。医学生だった彼と、親友であるアルベルトは 冒険と、日常からの逃避のため、オートバイによる北米旅行を思いつく。そのときに書かれた日記…

感想『スローターハウス5』カート・ヴォネガッドJr.〜第二次世界大戦ドレスデン爆撃の被害者でもある著者の半自伝的名SF。~「もしあの時に戻れたら」と人々はよく言うが、仮に戻れたとしても、戻るのが自分なら多分何も変わらない。

スローターハウス5 「われわれにしたって同じことさ、ピルグリムくん。この瞬間という琥珀に閉じ込められている。<なぜ>というものはないのだ。」 <時の試練>を乗り越えた本だ。 不朽の名作でもあるし、主人公の人生においてもそうだ。普通の人の千倍も…

感想『死の蔵書』ジョン・ダニング著〜本好きにはたまらない‼️古書収集家の刑事が主人公のハードボイルド&ミステリー!!私の脳内映画館では殿堂入りの大ヒット作!!

ミステリーを読むときは自分流の決めごとがある。 脳内で、映画館を開くか否かだ。 本読みの人は、誰しも一度はやっているとおもうのだが、要するに登場人物に配役をふりわけて、脳内のスクリーンで映像化するかどうかである。上映するかどうかの決め手は主…

感想『久生十蘭ジュラネスク珠玉傑作集』久生十蘭著〜幻想的で、硬質で、軽妙洒脱で、残酷。著者最大の問題作『美国横断鉄路』、構成の巧みさが光る『南部の鼻曲がり』、幻想の一つの極地『生霊』収録。

幻想的で、硬質で、軽妙洒脱で、残酷。 その作風は多岐にわたり、そのどれもが超高圧にして練磨されつくしている。自然描写は美しく、情感に溢れ、語りやセリフは弾むようなリズムがある。著者の持つ特異な経歴が遺憾なくその作品に反映され、他のどの作家と…