2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧
『ボンド通りのダロウェイ夫人』 ※引用はすべて本作より抜粋したものです。 この作品は傑作だ。正直タイトルはなんの面白みもない。なんの期待もしていなかった。内容もほとんどない。アラフィフのダロウェイ夫人がただ手袋を買いに行くだけの話。〈つまらな…
<少年時代、私は一通の手紙で彼と出会い、彼の「楽園」に案内されたのだった。塚本邦雄は、実際に逢うまでは実在の人物かどうか、私たち愛読者にさえ謎であった。〜本書より抜粋。 上記は塚本と15年の間友人とも師弟ともいえる関係にあった寺山修司の言葉。…
その百科全書的知識、博覧強記の作風で〈小説の魔術師〉とまで言われた作家が、かつて日本にいました。久生十蘭という名前の作家です。 年季の入った読書家や作家の間に熱狂的なファンが多く、そんな彼らは〈ジュウラニアン〉と呼ばれています。 そんな久生…
杉浦日向子(すぎうら・ひなこ) 1958年11月30日、東京生まれ。1980年「ガロ」で漫画家としてデビュ―。江戸の風俗を生き生きと描くことに定評がある。1993年、漫画家引退を宣言。「隠居生活」をスタート。江戸風俗研究家として多くの作品を残す。2005年7月22…
『夜の果てへの旅』は「明確な目的のある本」であって、その目的とは現代の人生の-いや、むしろ人生そのものの恐ろしさ、意味のなさに対して抗議することである。 上記はジョージ・オーウェルの評論『鯨の腹の中で』からの引用で、ある意味ではその通りであ…
悲劇的ピエロ気質でうっかり戦争に参加したことから、果てのない地獄を遍歴することになるバルダミュ。 彼の「語り」で物語は綴られる。戦争、放浪、病気、失恋。バルダミュの遍歴はまるで血の巡りの悪いオデュッセウスよろしく辛酸を嘗め尽くす。ところが不…
大人が楽しめるとびきり上質の絵本です。悲しみと向き合う「私」の物語。 悲しみがとても大きいときがある。どこもかしこも悲しい。からだじゅうが、悲しい。 「私」は悲しみをだれかに話したい。たとえば私のママに。 「私」は悲しみをだれにも話したくない…
どの国、どの時代にも起爆的役割をになう思想がある。美術や伝統、革命や戦争、果ては迫害など表出手段は様々だが、本書『ツァラトゥストラはこう言った』は幸福にも散文詩のような物語形式において発表された。 そのまま通読しても、正直よく判らない。攻略…